FC2ブログ
晩夏の海月
時折半透明になりながら、ぽちぽち物書きしています。
Twitter企画SS:世界は僕を照らさないで
小説に拍手ありがとうございます!
あまり評価を聞く機会もないので、すごくとても嬉しいです。^^*

さて、亀の歩みで(亀に失礼)企画SS第五弾。
お名前は「星(せい)」さんです。


※ご注意※
少々、性的な表現、また同性愛的な表現があります。
上記について興味本位で煽る意図はございません。
また否定や中傷する気持ちで書いたものでもありません。
苦手な方は閲覧ご注意いただければ幸いです。






世界は僕を照らさないで



僕と陽は双子の兄弟だった。
星、と、陽。
両極端な名前と言われることもあったが、僕たちは同じようにわんぱくで、星は恒星だねと天体マニアの親父はよく言った。
恒星とは自分で光を出す星のことだ。
陽が太陽なんだったら、その光を反射して光る、惑星とか衛星とかでもいいのにな、
僕はそう思った。

それほど僕達は小さいころとても仲が良くていつも一緒に遊んでいた。
あまり話さなくなったのはいつごろからだったろうか。


せめて、陽が他人だったらよかったのに。
せめて、陽が女の子だったら、よかったのに。

僕は陽のことを、双子の弟のことを、男同士として見て、
そうして恋の、愛の、性の対象として、
好きだった。
それに気付いてから、僕は陽を避けるようになった。


中学のとき陽とは別の好きな人ができた。
そいつと僕は仲のいい、本当に仲のいい友達だった。
だから、ふざけてじゃれ合っていただけだった。
やばい、と思った時にはもう、そいつの身体がそこに触れていた。

「え、男に触られてカタくなってんのこいつ、キモ」

その一言から、卒業するまで苛め抜かれた。
陽と離れるために受験して入った私立の中学でだった。


受験し直し県立高校に進んでからは誰とも仲良くならずに一人で過ごした。
話す相手はいるが、上辺だけだ。
学校の中でも外でも、何人もの女の人と適当に付き合うようになった。
クラスでオタクの女どもがホモだのなんだのと騒いでいるのを聞けば、机を蹴っ飛ばしてキモいと罵った。
誰からも一線を引かれたまま、ふらふらと生きて一年を過ごした。



ぽかんと明るい春先の夕方。
陽と同じ制服を着た数人と街角で擦れ違った。
その中に、見覚えのある顔がいた。
あいつ、ホモだぜ。
擦れ違うときに誰かが言った。
僕は拳を握った。
数人程度なら、殴り倒せる自信はあった。

双子の弟いるだろ、うちの学校に。
その弟が本命なんだって。
弟、知らないみたいだったぜ。
え、言ったの?
教えてやろうと思って。だって一緒に住んでんだろ?
え、うそまじキモいってかそいつキチガ

ゴオオオオウと耳鳴りがして何も聞こえなくなった。
近くの電柱に手を着いて座り込むのを堪える。
はっと気付くとやつらはもういなくなっていた。


ぽかんと明るい、春先の夕方だ。
少し風が冷たくなってきた。


「星?」

少し後ろから聞き覚えのある声がした。
さっきすれ違ったやつらと同じ制服。
軽く駆ける靴音がして、すぐ横に並ぶ。

「せーい」

知らないふりを決め込んでいると、ふいに横からがばっと飛び付かれた。
香水も何もつけないけれどすぐにわかる、陽の匂いだ。
中学のあのときをふいに思い出した。
何も知らない陽の身体が、そこに。
咄嗟に僕はその腕を振り払った。

「離れろうぜえ死ねよ」

言い捨てて後ろも見ずに走った。


電話が鳴ったのは家に着いて少しもしないうちだった。
駆け込んだ病院で陽は身体も頭も包帯でぐるぐる巻きにされて人工呼吸器に繋がれていた。
すぐ近くで親父とお袋が泣き崩れている。
陽はあのあと近くの道路で居眠り運転のトラックに轢かれた。
僕が近づくと陽はふっと目を開けた。
側についていた医師がはっとした顔をする。
本当は、目を開けるはずもないような容体だとすぐにわかった。


「せい」
「よ、う、」
「星、あのさ、星、もしかして俺、のこと、」

僕は何も言えなかった。陽の声はもう掠れて、いちばん近くに寄った僕にすら微かにしか聞こえない。

「俺ね、星は俺のこと嫌いなんだ、と思ってて」

僕は首を横に振った。ぶんぶんと振った。

「ごめんね、星の気持ち、には応えられない、けど、星が、俺のこと嫌いじゃなかったから、よかっ、」

それだけ言って陽はもう動かなくなった。


病室を飛び出すとき両親が僕を呼び止めようとする声が聞こえた。
親父もお袋も僕が、陽のことを好きだったと知らない。
いたずらばかりした僕のことを光放つ恒星だと言ってくれた親父も、
中学で苛められ制服をボロボロにされて帰ったとき何も訊かず新しいのを買っておいてくれたお袋も、
僕が、
僕がこんな、
こんなふうに生まれてきてしまったのだとは知らない。


僕が去年机を蹴っ飛ばして怯えさせた女の子たちとはクラス替えで離れた。
あのとき僕の内臓を突き上げるようにドロドロと沸き上がった怒りは、
彼女たちの空想や読んでいる漫画のなかでいとも簡単に僕のような男が幸せになることへの、
とてつもない羨ましさと悔しさとだった。



病棟の屋上は鍵がかかっていて出られなかった。
踊り場のいちばん上で僕はしゃがみ込む。
そこはじっとりとして暗い。
僕がただ誰にもいま見えていないことを願った。
世界よ僕を照らさないで。
そう願いながら僕はただじっとそこに蹲った。



〈了〉


※恒星、惑星、衛星について正式な定義とは少々違う部分のあることをお断りいたします。
スポンサーサイト

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

[2014/03/25 23:46] | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<明日は名古屋コミティアです♪ | ホーム | Twitter企画SS:にゃんちゃんのこと>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://kurage3310x.blog.fc2.com/tb.php/70-baaa07a8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |
ご訪問有難うございます。

プロフィール

伴美砂都

Author:伴美砂都
つばめ綺譚社の伴美砂都です。
小説を書いています。
どうぞよろしくお願いいたします。

twitter:
つばめ綺譚社@TsubameKitan
わたし@misatovan

小説通販 渡り鳥販売:
つばめ綺譚社通販
ピコ通販様

最新記事

カテゴリ

リンク

このブログをリンクに追加する

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

最新コメント

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR