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晩夏の海月
時折半透明になりながら、ぽちぽち物書きしています。
Twitter企画SS:スカイブルーなブルースカイ
Twitterのタグで、「ふぁぼしてくださった方のお名前を拝借して何か書く」という企画をやりまして…
まずは第一弾です!
お名前は、「おじょう」さんです。
スカイブルーなブルースカイ



美術部の部員で、毎日真面目に通っているのは私ぐらいのものだ。
どんなに天気の良い日でも、スカイブルーのお空が恋しくなんてならない。
授業が終わると足早に、北校舎1階、夏は暑くて冬寒い、日当たり最悪の美術室へ急ぐ。


「よう、おじょー」

ガラガラと建て付けの悪い引き戸を開けると、ヤツが椅子に胡座をかいてキャンバスに向かっていた。

「おじょーじゃなくて小城、こ・し・ろ!何度も言ってんじゃん!」
「いーじゃん、音読みすればおじょーだし」
「よくないっ」
「だってさー小城みしろって言いにくくね?」
「大きなお世話!っていうか、先生のくせに生徒にそんなこと言っていいわけ?」
「お前こそ先生にそんな口の利き方していいわけ~」
「ああもう!ムカつくっ」

ヤツの姿が視界に入らないような向きに椅子とイーゼルを置いて、やっと息をつく。

今日は昨日よりたくさん喋れた。
今日は昨日よりたくさん喋れた。
嬉しくなってしまう自分の気持ちが情けない。
だって、
その間だってヤツはこちらを見ることもなければ、筆を止めもしなかった。
そして、
パレットを持つ左手の薬指には、
しっかりとシルバーの、指輪があるのだ。


「そこもーちょっと薄めの青入れてみ」

突然に頭上から声が降ってきて、私は咄嗟に取り落としそうになった筆を握り締める。
右斜め上に、ヤツの顔があった。

「小城、おまえさ」
「…はい」
「絵描いて食ってこーと思ってんのか」
「え、…はい」
「そうか」

頑張れよ、とも、できるとも無理だとも、ヤツは言わなかった。
ヤツは産休の代わりの非常勤講師だから、おそらくあと数か月で、この学校を去る。
そうしたら、もうきっと会うこともない。

「手ぇ止まってんぞ」
「…」
「おじょーお前、そーやって黙ってりゃ見た目ほんとにお嬢なのにな」
「…は、なにそれうるさいし!」

ヤツの顔がまだ近くにある右肩がジンジンして、早く離れてほしい。
眼球の奥がきぃんと痛んだ。
左上に顔を逸らす。日当たり最悪の美術室から唯一見える空は、隣の校舎に遮られてオマケ程度に覗く、細長い四角の形。
でもそこはあまりに青くて眩しくて、涙を飲み込んで私は、絵筆にたっぷりのスカイブルーを乗せた。


〈了〉



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[2014/03/05 00:22] | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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